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中土手の整備計画
徳島市を流れる吉野川北岸の河口より約600m上流部には、かつて海岸線と平行して約1.0kmにわたって帯状に連なる雑木林が存在しました。これは、江戸時代末期1800年代の新田開発により形成された防風林の名残であり、地域住民からは「中土手」と呼ばれていました。元々は美しい松原でしたが、経年により多種多様な雑木が繁茂し、鬱蒼とした林となっていました(写真-1,参照)。
中土手の整備計画は、同地区に建設された四国横断自動車道の周辺対策事業の一環として進められました。2023年8月には、市道旭野中央線と3つの街区公園(小松東公園、小松北公園、旭野公園)が整備されました(写真-2,参照)。
整備計画にあたっては、地域住民の参加によるワークショップを開催し、その意見を計画にも反映させました。多くの参加者からは計画の実施を歓迎する声が聞かれましたが、一部にはこの雑木林を「トトロの森」と評する移住者もいたことから、環境に対する住民意識の多様性が感じられました。
私はこれまで、建設部門の技術士として数多くの道路や公園などの公共土木施設の設計に携わってきましたが、利便性や安全性に重点を置くあまり、現状を変えることが地域住民の環境意識にどのような影響を与えるかを十分に考慮できていなかったのではないかと感じています。公共施設の整備により人々の生活は便利になり、経済の発展にも寄与しますが、環境の変化が伴うことを忘れてはなりません。
設計者として,中土手の整備計画が全ての利用者にとって望ましいものであることを願ってやみません。
(建設部門 道路)